「キングスマン」は、「キック・アス」などで知られるマシュー・ヴォーンが監督し、またエルトン・ジョンの半生を描いた「ロケットマン」で主人公エルトン・ジョンを演じた英俳優タロン・エガートンのデビュー作として知られるブリティッシュ・スパイアクション作品です。
スーツとメガネと英国紳士が好きな全世界女子のフェチズムを刺激し、ブラックすぎるギャグ演出でも話題を博したこの作品。
現在2作目の「キングスマン:ゴールデンサークル」までがリリースされており、今秋にはスパイ組織キングスマンの前日譚を描いた「キングスマン:ファーストエージェント」が公開されます。
目次
とあるチンピラと秘密諜報局員の出会い
出典元:http://www.kingsman-movie.jp/ 背広の語源となったことでも知られるイギリスの高級テーラーが立ち並ぶサヴィルロウに建つ老舗のテーラー、キングスマン。
数々の政治家が高級スーツを仕立てたこの店の姿は、実は表の顔。
試着室の鏡に触れると秘密の地下室に誘われ、英国がその存在をひた隠す国際秘密諜報機関としての本当の姿を現します。
秘密諜報局キングスマンに在籍するハリー・ハート(コードネーム:ガラハッド)は、17年前に相棒のリー・アンウィンを任務中に亡くし、以来一人でスパイ活動に従事していました。
時同じくして、ロンドンの集合住宅で暮らすゲイリー・“エグジー”・アンウィンは、母親と付き合っている暴力的な彼氏に虐げられながら、そこから逃げるようにチンピラ仲間とつるむ日々を過ごしていました。
ある日、母親のことをバカにされた腹いせに仲間とともに相手の車を盗み、パトカーとカーチェイスする羽目になったエグジー。最終的に事故って動けなくなった上に仲間にも逃げられ、一人取調室に連れていかれたエグジーでしたが、幼い頃に父親から譲り受けた形見のペンダントに掘られた番号へ電話してみると、その直後に釈放されます。
話を通したのは、彼の父親と親交があったというハリーでした。父親が託した秘密諜報組織キングスマンの直通番号へかけてきたエグジーに、彼は父の本当の仕事を明かします。
パブで話す2人の元にやってきたのは、エグジーに車を盗まれたチンピラとその仲間たち。
汚い言葉で罵る彼らに対し、ハリーは静かに行動を起こします。
「Manner makes man. (礼節が人を作る) 意味は分かるか?」
ダブルのスーツを着こなして大振りの眼鏡をかけた、絵に描いたような英国紳士の姿のハリーは若者にそう問いかけます。
状況が呑み込めない彼らに対し、ビールジョッキのクリーンヒットをお見舞いしたことをきっかけに、電気ショックや傘型のショットガンなど、スパイならではのガジェットを駆使して大立ち回りを繰り広げたハリー。
全員をサラリと倒した後、彼はエグジーに父のスパイとしての仕事を継ぐ気はあるかを問います。
見たこともない特殊な秘密兵器を目の前にし、自分もこの仕事をこなすことができれば家族を救えるかも知れないと考えたエグジーは、ハリーについていってみることを決意します。
老舗テーラー「キングスマン」の地下にある直通列車で本部へ向かうと、そこにはエグジーと同じぐらいの年齢であろう若者が集められ、訓練施設での過酷なトレーニングや、理性を試される試験が行われてゆきます。
その頃、アメリカのIT長者であり過激エコ論者でもあるリッチモンド・ヴァレンタインは、人口過密により蝕まれてゆく地球の未来を危惧していました。
地球の未来を豊かにするためには、一度選ばれた人間だけを残し、他の人間は消さなければならない。そう考えた彼は、そのIT技術を活かして特殊なSIMカードを作成します。
ロンドンの格差社会と、アメリカとの対立構造を体現したキャラクター
主人公のエグジーは、労働者階級の貧しい家庭で育った青年です。
一見スタイリッシュな都市に見えるロンドンですが、社会的には富裕層に富が集まり、労働者階級の生活がなかなか改善されず、定職に着けない国民が多いという現状が象徴的に描かれ、常に苛立っていたり眉間に皺を寄せている様子が印象的です。
対してテロリストとなるヴァレンタインは陽気なサディストといった様子。
いつもニューエラキャップをかぶり、客人をもてなす食事はマクドナルドという、いわば日本人のヒーローが日本刀を持った忍者として描かれるように誇張されたアメリカ人として描かれています。ニック・フューリーを演じていたサミュエル・L・ジャクソンがよく出演をOKしたなと思うぐらい、IT長者なのにバカっぽいそのキャラクターは、ある意味憎めないダークな笑いを観客に提供します。
007×ハリー・ポッター?
出典元:https://www.sonypictures.jp/he/1231116/この映画では、一流のスパイになるために訓練へ勤しむ姿が描かれます。
初日に水で満たされた寝室から脱出したり、降下訓練で一人だけパラシュートが開かなかったりと、心身共に大きな負担のかかる試練が与えられます。
それらを乗り越え、最終試験まで残ったのはエグジーと紅一点の候補生、ロキシー・モートンでした。
この作品はスパイ映画であるという側面を持ちながら、貧しい環境で育った主人公の成長物語であるという側面も持ち合わせていて、それは作中の会話で「マイ・フェア・レディ」が登場するところからも伺えます。
イギリスを舞台に揃いの制服を着て、特殊な技能を学ぶ若者の姿を描き、その内部に不穏な企みを持つ者がいるという構図は、少なからず「ハリー・ポッター」を意識しているといえます。
エグジー役にこれまで映画出演経験のなかった全くの新人を起用し、才能を開花させ、その後の人生が変わったというシンデレラストーリーも、ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフと重なりますね。
英国紳士を全面に押し出した衣装
出典元:https://www.sonypictures.jp/he/1231116/組織の仮の姿がテーラーというだけあり、出演者の衣装は英国紳士を体現したものとなっています。
キングスマンとなる店舗は実際にサヴィルロウで店を構える「HUNTSMAN」の内装が使用されており、様々なスパイガジェットが整然と陳列されていた什器も実際に使用されているものとのこと。
ハリーやエグジーが身に付けるキングスマンの「制服」ともいえるスーツには、由緒正しい生地メーカー「ドーメル」の生地を使ったオーダーメイド、毒刃の飛び出すシューズにはジョージ・クレヴァリー。テレビ電話や望遠機能などギミック満載の眼鏡には監督のマシュー・ヴォーンがプライベートでも使用している「カトラー&グロス」のものが、ショットガンに変身する傘にも老舗の「スウェイン・アドニ―」製のものが登場します。他にも本作で登場するエージェントが身に付ける衣装やガジェットには全て英国の一流ブランドが使用されているというこだわり様です。
眼鏡だけは映画用に特別制作されたものなので若干形が異なるのですが、全て現在も生産されていて手に入る衣装で、ファッション好き・スーツ好きからするとストーリーもそっちのけに見ほれるほどの仕上がりとなっています。
劇中でサミュエル・Ⅼ・ジャクソン演じる悪役のヴァレンタインも、ロンドンへ赴いたシーンでは競馬観戦用にモーニングコートとシルクハットを仕立てる様子が描かれました。
スーツ姿とは正反対のド級アクション
英国紳士といえどスパイ映画。
年齢にそぐわない過激なアクションを披露するコリン・ファースや、実際にパラシュート降下している様子など、手に汗握る激しいアクションも目白押しとなっています。
特にトピックスとなるのは境界で暴走する信者とハリーを描いたシーン。
一流のスタントチームに世界大会優勝の体操選手・タイのプロボクサーやダンサーなどが演じるエキストラを前に、怒涛の殺戮を繰り広げるコリン・ファースの姿がワンカットで描かれる様は、興奮とカタルシスが混ざり合った名シーンとして知られています。
エグジーとともに成長するタロン・エガートンに注目
本作がデビューとなり、いきなりコリン・ファースやサミュエル・L・ジャクソン、マイケル・ダグラスなど、世界的な名優たちと同じ土俵で演技合戦を繰り広げることになったタロン・エガートン。 物語が進むに連れて彼の俳優としての経験値も積み上げられ、エグジーが一人前のスパイとなってゆく様子があたかもタロン自身の成長譚であるかのように見えます。
特にクライマックス直前、飛行機の中で初めてのオーダースーツに袖を通すシーンはそれを象徴するといえるでしょう。どこかぎこちない彼の姿は大人の階段を上り始めた第一歩のように初々しく、それでいてアクションシーンでは時折コリン・ファースと見紛う表情を見せ、頼もしさも感じられる絶妙な塩梅の演出となっています。
・イギリスの治安とキングスマンの事を両方TLで見掛けたんだけど
キングスマンの1作目は不景気で治安が悪くなったイギリスに忠実って話も有るよね
・ハマりそう。キングスマン1作目、めっちゃ面白かった。すごく面白かった。最高。
・キングスマン見た1週間後に銀座の英國屋にスーツ仕立てに行ったバカはこちらです
・キングスマンが見たい…あれめっちゃ最高なんです…スーツ…はあはあ←